時間旅行者の夢(69) [小説『タイムトラベラーの夢』]
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「もしかして、きみたちは学者の肉体関係までファイリングにしているのか?」
「わたしのことは、どこまで調べてるのかしら」
「あらゆることをファイルしようと努力中ですよ。あれを見たら、あなた方もあっと驚くでしょう。とにかく、委員会の人選はなんとか纏まりました。テコでも承知しない人や、データ調査で難色の出た人たちの補充をつけて、調整、再調整のすえ、やっと……」
「そこまでの手数をかけるぐらいなら、レイナ・ランスロットをペテン師だと片づけて、無視したほうが簡単じゃなかったのかね」
と、フィルが皮肉った。
意に介さず川田が言った。
「昨夜、シドニー郊外でEOW教団の大集会があったんです。その話、聞きましたか?」
「いや」と、二人は首を振った。
「海岸沿いに五万人が集まった。彼らがそこへ集まるまでに、約五〇〇万ドル相当の財産が破壊された。そして、いつもの乱行のあと、連中は海に向かって行進を始めたんです。
周辺の国々から入国していた信者も含めて五万人のEOW教徒が、ほとんど素っ裸で太平洋へ行進して行くところを想像してください。溺死者の数さえ、未だに不明なんです。少なくとも百人以上でしょう。
それ以外にも、下敷になった娘が十人も死にました。その他怪我人の数に至っては、神のみぞ知るです。アジアのある特定国なら、もしかしたらそんなことも起こりかねません。しかし、オーストラリアでねえ」
と、川田は溜息をついた。「我々が何に対抗しようとしているか、この話で分かったでしょう? レイナがあの動きを木っ端微塵にしてくれることを願うばかりです。
彼女が2812年の世界のことを話せば、EOW教団も崩壊する。どうです、ビールのおかわりは?」
「そろそろ、ホテルへ行ったほうがいいだろう」
とフィルが言うと、
「そうですね」
と川田も立ち上り、三人はその店を出た。
公園沿いを歩きながら、川田はこうも言った。
「あらかじめ警告しておきます。あなた方がこの街にいることをマスコミが知ったら、インタビューだのなんだのと、今に煩く食いついてきますよ。
出来るだけあなた方を匿(かくま)うようにはしますが、恐らく向こうはそれを突破してくるでしょう。しかし、どんな質問をされても、答は……」
「ノー・コメント」
ヒカルとフィルは同時に答えた。そして笑った。
「ご名答。あなた方は今や大スターの扱いです」
そう言って川田も笑った。
雪がまた降り出していた。今年は寒暖の差が激しく、十一月なのに東京にもう雪が積もり始めた。舗道のあちこちに純白の薄い被覆が生まれ掛り、芝生ではそれが一段と厚くなっていた。
新しい雪解け水の水溜まりが、そこかしこで街灯を映した。星々は隠れて見えないが、舞い降りる雪はさながら星明りのように光っていた。
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by 青木玲子 (2011-08-08 18:05)