時間旅行者の夢(63) [小説『タイムトラベラーの夢』]



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 ヒカルには奇跡的に弾が当たらなかったのだと……。


「時間が歪められた、と言うのですよ」

「え?」

「わたしの知り合いがです。その可能性がある、と」


 川田も永嶋も、じっとヒカルの目を見た。ヒカルは言った。

「分かりません、わたし。でも、おなかに強い衝撃を受けた記憶が残っていたし、空の上へ飛んだような記憶、ずっと高い所から下界を眺めたような……」


「いえいえ」と、慌てて永嶋は手を振った。「無理して今、お答えになる必要はありません。

後日ご協力願えれば……ところで貴女のお兄様は、こういったことがご専門でしたね? 済みません、調べさせて頂きました」


「はい。でも、それならば、なぜ義兄(あに)に直接……わたしではなくて」

「レイナ・ランスロットが一番信用しているのが、貴女だからです」


「義兄については難しいかも知れません」

 と、ヒカルは返した。「義兄は変わり者です。ほとんど他人とは接しません。久し振りに日本へ帰ったわたしにさえも、会わずに帰ってしまうような人ですから」

 永嶋は川田と目を合わせた。


「あの」と、ヒカルは身を僅かに乗り出して言った。「他に適任が居るのですが……」


 永嶋と川田が振り返った。

「ほう。適任。どなたですか?」

「わたしがレイナと遭い、会話を交わす前からの友人で、レイナの監視者です」


 監視者などと言ってから、ヒカルは言わなければよかったかなと、少し後悔を始めた。


「監視者!」と永嶋。「どういうことでしょう」

「彼女の出現を予言していた人物です」


 これでは占い師か予言者扱いではないか。話がおかしな方向へ行っていることを自覚した。


「それは誰です?」

「フィル・シェルといいます」

「ニュージーランド人?」

「はい」とヒカルは答えた。

 違うと思っているが、それを言ったら話がややこしくなる。


 ヒカルはつづけた。

「十年ほど前、わたしが十六の頃からの付き合いですが、今は東京に来ています」

「職業は?」

「分かりません」

「それで信用できますか?」

「はい」と、ヒカルは断定した。「十年間、事あるごとに、わたしを助けてくれました」

「もしかして」と、川田が口を挟んだ。「それって、一緒に来ている人?」

 ヒカルは頷いて見せた。

「来てるの?」と、永嶋補佐官は言った。


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