映画『シャッターアイランド』 [映画鑑賞メモ]
監督: マーティン・スコセッシ
脚本: レータ・カログリディス
主演: レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングズレー
鑑賞時期: 2011年1月下旬
ボストン沖合いのある島が終始舞台になっている。そこは刑務所であり、精神病院でもある。
時は1954年。これはストーリーを理解するうえでも重要で、この頃はテレビの普及があり、2年前に水爆実験が行われ、5年前には「ある種の精神病に対する前頭葉白質切截術の治療的価値に関する発見」(ロボトミー手術)そのものに対してノーベル生理学・医学賞が授与されている。
シャッターアイランドと呼ばれるこの島で女性患者の失踪事件が起き、連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)が相棒のチャック・オウル(マーク・ラファロ)と共に、この島へフェリーで向かうところから映画は始まる。
ちなみにこの島で言うところの患者とは、殺人等を犯した凶悪犯のこと。
前の晩、レイチェルという女が鍵のかかった病室から消えてしまったらしい。
彼女の部屋に残された“67人目は誰?”と書かれたメモが謎を呼ぶ。
病院長ジョン・コーリー(ベン・キングズレー)から事情を聞いたテディとチャックは、休暇で島を離れたシーハン医師が事件に関与していると推測、聞き込みを開始する。
だが、テディがこの島を訪れた裏には、事件の捜査とは別の理由があった。
過去にテディは、妻ドロレス(ミシェル・ウィリアムズ)を火災で亡くしていて、ここに収容されている放火犯アンドリュー・レディスに復讐しようとしていた。
だが、患者からはレディスどころかレイチェルについても何の手掛かりも得られず、苛立つテディに突然レイチェル発見の知らせが入る。
すぐに面会するが彼女は錯乱状態になり、“3人の我が子を殺した”過去まで語る。この女は本当にレイチェルなのか?
一方、島を襲うハリケーンの直撃でフェリーが出港せず、テディとチャックは島から出られなくなる。
テディは病棟の奥に忍び込み、妻殺しの放火犯レディスの捜索を始めるが、発見できない。
この精神病院の患者数は66人。アンドリュー・レディスはどこに居るのか。
次に断崖絶壁の海岸を探索したテディは、洞窟に潜む女性を発見する。
彼女が本物のレイチェルではないかと直感したテディに向かって、女から「あなたは島から出られない」と警告される。
その頃になってテディは思い当たった。
妻の復讐のために島へ乗り込んで来たが、実は反対に自分は島におびき寄せられたのではないかと。
それが本当なら、誰が何の目的で?
島の外れの灯台で行われているらしい怪しいロボトミー手術の存在に気付いてしまった自分(テディ)は罠に嵌められたのか?
その頃になって、相棒のチャックの姿が見えなくなるが、テディは単身で灯台へ乗り込んで行く。だが……。
筆者は今、このDVDを観終わったところです。
主人公は灯台の中で衝撃的な事実を突き付けられるわけです。
流れが掴み辛くなるので上には書きませんでしたが、全編を通じてテディの過去に起きた出来事が逐次挟み込まれていることも、ここに書いておくことにします。
終戦直前にナチの収容所で見た、死体の山の中に横たわっていた母子の死体。ことあるごとに話しかけてくる死んだ妻の亡霊……。
ちょっと暗い感じの作品でしたが、正直いって面白かったです。そして余韻を残しました。
こういう作品は好きですね。そして鑑賞メモが長くなる(笑)
たった今、二度目の鑑賞を終えました。より深く理解できたように思います。
①冒頭、島に向かうフェリーの船首で、テディはチャック・オウルと初めて仕事で組むことを口にした理由。
②上陸した際、島の規則で拳銃を預けなければならないと言われたとき、保安官になって4年目だと言っていたチャックが、腰から拳銃を抜くのに手間がかかっていた理由。
③女性患者に事情聴取をしたとき、このような時に島を出て行ったシーハン医師とはどんな人物かとテディが尋ねると、患者の視線が一瞬チャックに向いた理由。
④同じ患者が「喉が渇いた」と言ってチャックを遠ざけた際、テディの手帳に“逃げて”と走り書きした理由。
⑤テディとレイチェル捜査で来たはずなのに、テディが「レディス」の名を口にするたびに、チャックが真剣な面持ちで興味を持った理由。
……などなどが理解できました。
以下はネタばれになるので、これからDVDを借りて観ようと思っている方はお気を付けください。
テディが灯台に押し入ったとき、そこで悠然と待っていたのは病院長コーリーでした。
今までテディ目線で描かれて来たこの映画を見ていた私は、苦しい戦争体験や最愛の妻を亡くして苦しんで来たテディが、ロボトミー手術で政府ぐるみの実験をしているかもしれないこの施設関係者に騙されていると思わされていました。
ところがこの灯台内で、テディ同様に信じられない展開となります。
ストーリー半ばで病院長によって語られていたが、学会でここの患者の治療法に様々な議論があること。
テディ・ダニエルズという人間は実在せず、彼はアンドリュー・レディスの妄想の産物であること。
つまり彼こそが当精神病院の“67人目の患者”であること。
過去、保安官アンドリュー・レディスは仕事中心で、ドロレスを愛してはいたが真剣に妻の悩みに向き合って来なかった。
それで妻ドロレスは放火騒ぎを起こして夫の気を引こうとしたが、引っ越した先ではとうとう気がおかしくなり、我が子3人を溺れさせて殺してしまった。
アンドリュー・レディスは、「楽にさせて」という妻を撃ち殺したために捕まり、妻の死どころか、子供達の死も己のせいだと思い込む。
ちなみにレイチェルとは彼の死んだ長女の名であり、失踪したレイチェルという患者はレディスの妄想の産物。
そして、洞窟で見た女性をレイチェルと思ったのはレディス(= テディ)の妄想であって、その女性は終盤に看護師の格好で登場してくる。
ともかく全篇を通じてテディの妄想が挟み込まれていて、現実との相違を見極めるには2回は見ないことには理解できなかった^^;
現実逃避したレディスはテディ・ダニエルズに変身して、“妻殺しのレディス”を追うという異常な世界で生きている。
つまり病院側はアンドリュー・レディスの現実逃避を治すために、このような大掛かりな演技を周囲全員でやったわけだ。
相棒のチャックが実はレディスの主治医シーハンだったり……。
上記④でも書きましたが、ここの患者はこの演技についていけずに本心が出てしまっている様を描いています。
冒頭で患者の一人が人差し指を口に当てて、テディに向かって「シー」と“ナイショ”のポーズを見せてしまっている場面など。
テディ(= レディス)は現実逃避している精神疾患中なので、そのポーズの意味さえ分からない(当然この時点では観ている私も分からない^^)
ここまで観た時、私は『精神疾患を抱えた人間の話なら脚本的に何でもありだな』と思ってしまうのだが、すべてを観終わった今は結構満足しています。おいしい料理を平らげた後みたいに(笑)
2度鑑賞すると、役者達の細かい演技やセリフで、「なるほどねえ」と頷ける。
病院長は、テディが数か月前にも今と同様に治りかけたが、直ぐに元に戻って(現実逃避して)しまった経緯を本人に説明している。
しかも、現実逃避だけならまだしも、レディスは暴力的でまわりの患者や病院関係者や警備員にも危害が及ぶ、と。
最後、翌日の階段の場面。
ここは静かな場面なのだけど、一種の迫力を感じた。
病が再発する可能性大と悟ったレディスは、モンスター【暴力的で妻や我が子の死に苦しむテディ】として生きるよりも、善人として死ぬ【ロボトミー手術で記憶を捨てて生きる】ことを選んだ──。
ボストン沖合いのある島が終始舞台になっている。そこは刑務所であり、精神病院でもある。
時は1954年。これはストーリーを理解するうえでも重要で、この頃はテレビの普及があり、2年前に水爆実験が行われ、5年前には「ある種の精神病に対する前頭葉白質切截術の治療的価値に関する発見」(ロボトミー手術)そのものに対してノーベル生理学・医学賞が授与されている。
シャッターアイランドと呼ばれるこの島で女性患者の失踪事件が起き、連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)が相棒のチャック・オウル(マーク・ラファロ)と共に、この島へフェリーで向かうところから映画は始まる。
ちなみにこの島で言うところの患者とは、殺人等を犯した凶悪犯のこと。
前の晩、レイチェルという女が鍵のかかった病室から消えてしまったらしい。
彼女の部屋に残された“67人目は誰?”と書かれたメモが謎を呼ぶ。
病院長ジョン・コーリー(ベン・キングズレー)から事情を聞いたテディとチャックは、休暇で島を離れたシーハン医師が事件に関与していると推測、聞き込みを開始する。
だが、テディがこの島を訪れた裏には、事件の捜査とは別の理由があった。
過去にテディは、妻ドロレス(ミシェル・ウィリアムズ)を火災で亡くしていて、ここに収容されている放火犯アンドリュー・レディスに復讐しようとしていた。
だが、患者からはレディスどころかレイチェルについても何の手掛かりも得られず、苛立つテディに突然レイチェル発見の知らせが入る。
すぐに面会するが彼女は錯乱状態になり、“3人の我が子を殺した”過去まで語る。この女は本当にレイチェルなのか?
一方、島を襲うハリケーンの直撃でフェリーが出港せず、テディとチャックは島から出られなくなる。
テディは病棟の奥に忍び込み、妻殺しの放火犯レディスの捜索を始めるが、発見できない。
この精神病院の患者数は66人。アンドリュー・レディスはどこに居るのか。
次に断崖絶壁の海岸を探索したテディは、洞窟に潜む女性を発見する。
彼女が本物のレイチェルではないかと直感したテディに向かって、女から「あなたは島から出られない」と警告される。
その頃になってテディは思い当たった。
妻の復讐のために島へ乗り込んで来たが、実は反対に自分は島におびき寄せられたのではないかと。
それが本当なら、誰が何の目的で?
島の外れの灯台で行われているらしい怪しいロボトミー手術の存在に気付いてしまった自分(テディ)は罠に嵌められたのか?
その頃になって、相棒のチャックの姿が見えなくなるが、テディは単身で灯台へ乗り込んで行く。だが……。
筆者は今、このDVDを観終わったところです。
主人公は灯台の中で衝撃的な事実を突き付けられるわけです。
流れが掴み辛くなるので上には書きませんでしたが、全編を通じてテディの過去に起きた出来事が逐次挟み込まれていることも、ここに書いておくことにします。
終戦直前にナチの収容所で見た、死体の山の中に横たわっていた母子の死体。ことあるごとに話しかけてくる死んだ妻の亡霊……。
ちょっと暗い感じの作品でしたが、正直いって面白かったです。そして余韻を残しました。
こういう作品は好きですね。そして鑑賞メモが長くなる(笑)
たった今、二度目の鑑賞を終えました。より深く理解できたように思います。
①冒頭、島に向かうフェリーの船首で、テディはチャック・オウルと初めて仕事で組むことを口にした理由。
②上陸した際、島の規則で拳銃を預けなければならないと言われたとき、保安官になって4年目だと言っていたチャックが、腰から拳銃を抜くのに手間がかかっていた理由。
③女性患者に事情聴取をしたとき、このような時に島を出て行ったシーハン医師とはどんな人物かとテディが尋ねると、患者の視線が一瞬チャックに向いた理由。
④同じ患者が「喉が渇いた」と言ってチャックを遠ざけた際、テディの手帳に“逃げて”と走り書きした理由。
⑤テディとレイチェル捜査で来たはずなのに、テディが「レディス」の名を口にするたびに、チャックが真剣な面持ちで興味を持った理由。
……などなどが理解できました。
以下はネタばれになるので、これからDVDを借りて観ようと思っている方はお気を付けください。
テディが灯台に押し入ったとき、そこで悠然と待っていたのは病院長コーリーでした。
今までテディ目線で描かれて来たこの映画を見ていた私は、苦しい戦争体験や最愛の妻を亡くして苦しんで来たテディが、ロボトミー手術で政府ぐるみの実験をしているかもしれないこの施設関係者に騙されていると思わされていました。
ところがこの灯台内で、テディ同様に信じられない展開となります。
ストーリー半ばで病院長によって語られていたが、学会でここの患者の治療法に様々な議論があること。
テディ・ダニエルズという人間は実在せず、彼はアンドリュー・レディスの妄想の産物であること。
つまり彼こそが当精神病院の“67人目の患者”であること。
過去、保安官アンドリュー・レディスは仕事中心で、ドロレスを愛してはいたが真剣に妻の悩みに向き合って来なかった。
それで妻ドロレスは放火騒ぎを起こして夫の気を引こうとしたが、引っ越した先ではとうとう気がおかしくなり、我が子3人を溺れさせて殺してしまった。
アンドリュー・レディスは、「楽にさせて」という妻を撃ち殺したために捕まり、妻の死どころか、子供達の死も己のせいだと思い込む。
ちなみにレイチェルとは彼の死んだ長女の名であり、失踪したレイチェルという患者はレディスの妄想の産物。
そして、洞窟で見た女性を(レイチェル)と思ったのはレディス(= テディ)の妄想であって、その前半で病室から逃げ出したというレイチェル女性は終盤に看護師の格好で登場してくる看護師であることを観客に知らせるかのように看護師の姿で終盤登場してくる。 (1月23日修正)
ともかく全篇を通じてテディの妄想が挟み込まれていて、現実との相違を見極めるには2回は見ないことには理解できなかった^^;
現実逃避したレディスはテディ・ダニエルズに変身して、“妻殺しのレディス”を追うという異常な世界で生きている。
つまり病院側はアンドリュー・レディスの現実逃避を治すために、このような大掛かりな演技を周囲全員でやったわけだ。
相棒のチャックが実はレディスの主治医シーハンだったり……。
上記④でも書きましたが、ここの患者はこの演技についていけずに本心が出てしまっている様を描いています。
冒頭で患者の一人が人差し指を口に当てて、テディに向かって「シー」と“ナイショ”のポーズを見せてしまっている場面など。
テディ(= レディス)は現実逃避している精神疾患中なので、そのポーズの意味さえ分からない(当然この時点では観ている私も分からない^^)
ここまで観た時、私は『精神疾患を抱えた人間の話なら脚本的に何でもありだな』と思ってしまうのだが、すべてを観終わった今は結構満足しています。おいしい料理を平らげた後みたいに(笑)
2度鑑賞すると、役者達の細かい演技やセリフで、「なるほどねえ」と頷ける。
病院長は、テディが数か月前にも今と同様に治りかけたが、直ぐに元に戻って(現実逃避して)しまった経緯を本人に説明している。
しかも、現実逃避だけならまだしも、レディスは暴力的でまわりの患者や病院関係者や警備員にも危害が及ぶ、と。
最後、翌日の階段の場面。
ここは静かな場面なのだけど、一種の迫力を感じた。
病が再発する可能性大と悟ったレディスは、モンスター【暴力的で妻や我が子の死に苦しむテディ】として生きるよりも、善人として死ぬ【ロボトミー手術で記憶を捨てて生きる】ことを選んだ……そういうことだと私は理解しました。
コメント 0